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お知らせ

サマータイヤ、オールシーズンタイヤ、スタッドレスタイヤの違い

 

寒い時期が続いております。皆さまもお身体には十分にご留意ください。
さて、先日、こんな記事を見かけました。


『スタッドレスタイヤを1年間つけていますが、本来は「履きつぶしNG」と聞きました。交換が面倒で履きつぶした場合は「違反」になるのでしょうか?』(フィナンシャルワールド・HPより)

https://news.yahoo.co.jp/articles/7c8e5349108cd04dcccb50d769fe10ab84a092a9

記事やコメントを見てみると、正確に理解していない方が多いですね。
自動車教習所で教わる内容だと思いますが、『知らない』となると免許取り消しですね!


冗談はさておいて、元自動車メーカ社員として、お話しします。

まず、本件の答えを端的に言いますと、スタッドレスタイヤの使用に関しては通常のサマータイヤと変わりありません。基本的に履きつぶしは違反にはなりません。

サマータイヤ、オールシーズンタイヤ、スタッドレスタイヤはいずれも『チューブレス・ラジアルタイヤ』の分類に入り、基本構造は3種類とも全く変わりありません。なので、通常の運転による使用下においては、現行の法律の範囲で運用すれば全く問題ございません。

ただし、それぞれのタイヤには、ユーザーの使い方に応じて、ゴムの材質、硬さ、タイヤパターンなどに変更を加えております。
例えば、サマータイヤでは『幅広い速度域での利用』『良好な路面状態での利用』『寒冷環境を除いた全天候下での使用』を前提としているため、硬めのゴム、剛性と撥水性を両立したタイヤパターンを採用しています。
一方、スタッドレスタイヤは『寒冷地での使用』『雪・氷による滑りやすい路面での使用』を前提としているため、柔らかめのゴム(または発泡性のゴム)、グリップ力を高めるためにやや剛性を落としたタイヤパターンを採用しています。
オールシーズンタイヤは、サマータイヤとスタッドレスタイヤそれぞれの特性の良いところを取り入れた構造となっています。具体的には硬めのゴムを使いながら、溝の多いタイヤパターンを採用しています。

さて、それぞれのタイヤの性能について比較してみましょう。
比較のポイントとして、『耐摩耗性』『材質劣化』『運動性能』を挙げてみます。

まず、『耐摩耗性』については、
サマータイヤ ≒ オールシーズンタイヤ >> スタッドレスタイヤ
となります。これはゴムの硬度の違いが大きく影響します。ただし、スタッドレスタイヤがゴムの摩耗が進みやすいだけであって、サマータイヤもオールシーズンタイヤも摩耗します。スリップサインが出たら交換時期であるのは変わりありません。

次に『材質劣化』についてです。こちらも
サマータイヤ ≒ オールシーズンタイヤ >> スタッドレスタイヤ
の順で性能が高いです。スタッドレスは柔らかいゴムや発泡ゴムの使用により、紫外線によるゴム劣化が進みやすくなります。ゴムが劣化すると、硬化していくのですが、サマータイヤのように堅くなるのではなく、人間でいう『骨粗しょう症』の状態になる、すなわち『ボロボロ』の状態になるということです。そのため、使用頻度に関係なく、スタッドレスタイヤの耐用期間が短いのです。しかし、サマータイヤもオールシーズンタイヤも材質劣化します。タイヤに細かいひび割れが生じた場合は材質劣化しているサインです。最悪の場合、バーストする危険性もございます。

最後に『運動性能』についてです。
こちらは、自動車が走行する環境条件によって、それぞれのタイヤの特性が発揮されます。
まず、普段使用される『サマータイヤ』です。こちらは舗装路面において、寒冷地を除いたあらゆる自然環境下において能力を発揮します。車両によっては200km/h以上の速度域でも走行可能ですし、非常に高い制動力を発揮します。

一方で、未舗装路や寒冷地においては、硬いゴムや溝の少ないタイヤパターンによるグリップ性能が損なわれてしまいます。


次に『オールシーズンタイヤ』です。こちらは舗装道路に加え、非舗装路、小規模の積雪など、幅広いシーンで性能を発揮します。もちろん、サマータイヤのように超高速域での性能はないですし、制動力もサマータイヤの90%以下ぐらいといったところです。しかし、ユーザーが普段使う速度域においては、十分すぎる性能になります。また、寒冷地での使用においても『初期の』スタッドレスタイヤと同等以上の性能を備えており、米国などの地域ではオールシーズンタイヤがメーカー標準のタイヤとして指定されています。

最後に『スタッドレスタイヤ』です。
こちらは基本的には寒冷地専用と考えた方が良いしょう。氷雪路面で最大の性能を発揮します。また、最新のスタッドレスタイヤにおいては、舗装路面でのグリップ性能が大きく向上しており、最高気温が10度を切るような環境下では、サマータイヤ以上の性能を発揮するケースもございます。
ただし、非舗装路面、雨天時、高温環境下では性能が下がりがちで、使用前提の速度域も他の2つのタイヤより低く設定されています。

以上が解説になりますが、ここで申し上げたのは、「敢えて違いを挙げるとすれば」の話であり、タイヤの基本構造が同じ以上、ユーザーが日常点検を確実に行い、異常(スリップサイン、傷、ひび割れなど)が見つかれば、即交換することが必要です。